わかりやすい地質百科

粘土鉱物

天然の粘土は、「粘土鉱物」と呼ばれる鉱物が主成分です。粘土鉱物は、自然界で起こる化学反応により、硬質な鉱物が化学変化してできた物質です。大部分は「層状珪酸塩鉱物」と呼ばれる結晶ですが、ほかにイモゴライト・アロフェンなどの準結晶質~非晶質(結晶の形をとらない)な物質も含まれます。「層状珪酸塩鉱物」は薄い板を何枚も重ねたような結晶構造をなしており、イモゴライト・アロフェンも基本構造は近い形をしています。 岩石を砕いていくと粘土に近いサイズの粒子になりますが、粘土鉱物とは性質が異なります。自然界の粘土には粘土鉱物以外の不純物も混ざっていますが、その性質は粘土鉱物の含有量や性質が大きく関わっています。

層状珪酸塩鉱物の結晶構造の解説図「層状珪酸塩鉱物」の形は図に示すように[四面体シート]と[八面体シート]という板状の結晶体が重なり合ってできています。これらの重なり方や間に挟まれるものの違いで、粘土鉱物の種類や性質が変わってきます。粘土鉱物は、その結晶構造が性質を大きく左右します。例えば「白雲母」は板の間に交換性陽イオンだけを挟んでいますが、「スメクタイト」はさらに水の層をはさんでいます。しかもその水分子を出し入れすることができ、それに伴って体積が大きく変化します。このような水を取り込んで体積が変化する粘土鉱物は「膨潤性粘土鉱物」と呼ばれています。

「膨潤性粘土鉱物」を含む地質は、水分の吸収・放出により、体積・含水比・比重・強度などの性質が大きく変化します。また、膨張・収縮を繰り返すと次第に組織が破壊され、強度が低下していきます。このため「膨潤性粘土鉱物」を多く含む岩盤は厄介な存在です。例えばこれらを多く含む岩盤は、地すべりや崖崩れが起こりやすくなっています。このため、こうした岩盤を対象に土木工事を行う場合には、慎重に調査・分析・検討を行う必要があります。

「(株)エイト日本技術開発 嶋 将志」

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